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cerberus
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ケルベロス

ケルベロス · 冥界の門番 — 三つの頭を持つ伝説の犬

ギリシア神話において冥府ハデスの入口を守る巨大な三つ首の犬。ヘシオドス『神統記』三一〇から三一八行(紀元前約七〇〇年)によれば、巨大な怪物テュポンとエキドナの子であり、ヒュドラ、キマイラ、オルトロスの兄弟である。ヘシオドス原典は五十の首を持つが、紀元前五世紀のピンダロスとステシコロス以降、三つの首が定型となった(アポロドロス『ビブリオテーケー』二・五・一二、紀元一から二世紀)。死者が冥府から戻れぬよう、また生者が冥府に立ち入らぬようにする双方向の門番である。ヘラクレスの十二の難業の最後がケルベロスを冥府から生きたまま連れ出すことであり、ウェルギリウス『アエネーイス』第六歌四一七から四二五行ではシビュッラが蜜と薬草を混ぜた菓子を投げて三つの首を同時に眠らせる。ダンテ『神曲』「地獄篇」第六歌では地獄第三圏の貪食者を見張る門番として登場する。J. K. ローリング『ハリー・ポッターと賢者の石』(ブルームズベリー、一九九七年)に登場する三つ首の犬『フラッフィー』はケルベロス神話の直接の変奏であり、音楽で眠らせるという弱点も神話から直接引用したものである。

🐉神・魔(15)
yamata-no-orochi

八岐大蛇(ヤマタノオロチ、Yamata-no-Orochi)は日本神話における最も象徴的かつ巨大な多頭の蛇龍であり、八世紀初頭の日本最古の史書である太安万侶編『古事記』(712)巻一神代『須佐之男命』条、ならびに舎人親王ら勅撰『日本書紀』(720)神代巻一に記される、八つの頭と八つの尾を持つ巨大な蛇である。漢字『八岐』は『八つに分かれた』、『大蛇』は『大きな蛇』を意味し、本体は典籍記録上『八つの谷と八つの峰にわたり、背には檜と杉が生え、腹は常に血で爛れている』と描写される。出雲国(現在の島根県東部)の肥河(現在の斐伊川)流域に毎年現れ、足名椎(アシナヅチ)・手名椎(テナヅチ)夫妻の娘を生贄として要求し、拒めば村を破壊する。八人の娘のうち七人を食い尽くした後、最後の娘櫛名田比売(クシナダヒメ)の番が回ってきたところに、天上から追放されて出雲に降臨した嵐神須佐之男命(スサノオノミコト)が現れ、櫛名田比売を櫛に変えて自身の髪に挿し、大蛇を退治する。退治の戦略は典籍記録の中でも最も有名な部分で、須佐之男は八塩折の酒(やしおりのさけ) — 八度繰り返し醸造して濃縮した強い酒 — を満たした八つの大樽を八つの門の前に置き、大蛇の八つの頭がそれぞれ異なる樽に浸るように仕向けた。八つの頭がすべて酔って眠りに落ちると、神剣十拳剣(トツカノツルギ、『十握りの長さの剣』)で八つの頭と八つの尾をすべて斬り落とした。尾の一つを斬ろうとした際に刀が折れ、中を見ると別の神剣が入っており、これが日本皇室の三種の神器の一つ草薙剣(クサナギノツルギ、別称天叢雲剣)の発見譚である。

wyrm

ワーム(wyrm、古英語wyrm、古ノルド語ormr、古高ドイツ語wurm)は脚も翼もない原始的な蛇形の巨大龍で、ゲルマン・北欧神話における最も古い龍図像であり、後世のクロマティック・ドラゴンや紋章学のワイバーン分類とは別個の形態系統を成す。語源は印欧祖語の語根『*wérmis(虫、蛇)』にまで遡り、ラテン語vermis、サンスクリット語krmiと同根である。古英語叙事詩『ベーオウルフ(Beowulf)』(現存単一写本、大英図書館Cotton MS Vitellius A.xv、約一〇〇〇年頃)の末尾(二二〇〇-三一八二行)で、五十年間山中の洞窟で宝を守り、盗まれた杯に激怒して村を焼く老龍が『wyrm』と記される。最も有名な事例は十三世紀後半アイスランドの散文エッダ『スノッリ・エッダ(Snorra Edda、1220年頃スノッリ・ストゥルルソン編)』のギュルヴィたぶらかし(Gylfaginning)第三十四章と『古エッダ(Sæmundar Edda)』が記録するヨルムンガンドル(Jǫrmungandr、『巨大な杖』『巨大な棒』)、すなわちミッドガルド(Miðgarðr)の海を取り囲む世界蛇で、自身の尾を口に咥えて人間世界全体を巻き、ラグナロク(Ragnarǫk)の最終決戦で雷神トール(Þórr)と運命的な相打ちを迎える。英国の地方伝承では、ダラム州ペンショーのランブトン・ワーム(Lambton Worm、一四世紀十字軍出身の存・ランブトン卿が魔女の助言で処置、一八六七年バラッド出版)、サセックスのリミンスター・ナッカー(Lyminster Knucker、九世紀サクソン領主が処置)、デヴォン州のシャーボーン・ワーム(Sherborne Wyrm)など、地方単位の巨大蛇伝承が豊富である。

🐉種族(5)
goblin

ゴブリン

Goblin · 狡猾な小型部族 — 数と小知恵で生きる略奪者

ゴブリン(Goblin)は現代英語圏ファンタジーにおいて最も普遍的な『略奪小型亜人種』であり、中世ヨーロッパ民間伝承の意地悪な小妖精・小鬼に起源を持ち、十九世紀ヴィクトリア朝期のクリスティナ・ロセッティの詩『ゴブリン・マーケット(Goblin Market, 1862)』とジョージ・マクドナルドの児童小説『お姫様とゴブリン(The Princess and the Goblin, 1872)』、J.R.R.トールキンの『ホビット(The Hobbit, 1937)』第四-六章『霧ふり山脈のゴブリン』、そして一九七四年TSR『Dungeons & Dragons』オリジナル箱入りセット(ゲイリー・ガイギャックスとデイヴ・アーネソン)を経て定型化された。身長九〇-一二〇センチの痩せた体躯、頭部に比して大きい耳と鼻、黄緑色または灰色の肌、黄色い目、そして鋭い犬歯が決定的な外形的特徴である。洞窟・廃墟・暗い森の部族居住地(ゴブリン・ウォーレン)で群れをなして暮らし、罠・伏撃・略奪で生存する。個体戦闘力は第五版D&D『モンスターマニュアル(2014)』基準で挑戦評価一/四(体力七・防御等級一五)と非常に低いが、圧倒的な数と狡智、即興の臨機応変で冒険者にとって絶え間ない脅威となる。整列は一九七七年AD&D『モンスターマニュアル』以降、中立にして悪に固定。派生は『ウォーハンマー・ファンタジー(1983-)』のグリーンスキン、J.K.ローリング『ハリー・ポッター(1997-)』のグリンゴッツ銀行ゴブリン、ブリザード『ワールド・オブ・ウォークラフト(2004-)』のカザン・ゴブリン、R.F.クアン『バベル(2022)』など英語圏ファンタジー全般に活発に援用される。

gnoll

ノール

Gnoll · ハイエナ人間 — 飢えに狂った略奪部族

ノール(Gnoll)はブチハイエナ(Crocuta crocuta)の頭部、茶灰色の斑点毛、笑い声を持つ人型略奪種族で、一九七四年ゲイリー・ガイギャックスの『Dungeons & Dragons』オリジナル箱入りセットで導入され、一九七七年AD&D『モンスターマニュアル』で混沌悪・挑戦評価一/二・飢えと虐殺の魔王イェーノグー(Yeenoghu)を崇拝する遊牧略奪部族として定着した。語源についてはガイギャックス本人が一九七六年TSR社内誌『Strategic Review』第六号と一九八五年『Dragon Magazine』第百号インタビューで、ロード・ダンセイニ(Lord Dunsany、1878-1957)の短編集『驚異の書(The Book of Wonder、1912)』所収「ナースがノールに対していかにその技を施したか」のノール(gnole)から借用したことを明示した。グノーム(gnome)とトロル(troll)の合成と解釈されることも多い。外形は身長二一〇-二二〇センチの粗剛な筋肉質体躯、ブチハイエナの頭部、茶灰色の斑点毛、人間の指のような爪、そして決定的な聴覚特徴である狂気じみた『フーピング(whooping)』笑い声(ブチハイエナの縄張り誇示音から借用)。サバンナ・荒野・砂漠を遊牧する四-十二匹規模の略奪パック(pack)を成し、イェーノグーの祝福を受けた『イェーノグーの牙(Gnoll Fang of Yeenoghu)』に従う。第五版『ヴォーロのモンスター案内(Volo's Guide to Monsters、2016)』が最も詳細に記す設定 — ノールは自然繁殖種族ではなく、イェーノグーの魔神血液(demon ichor)がブチハイエナを変異させた結果 — が現在の正典である。同系統はゲームズワークショップ『ウォーハンマー・ファンタジー』のグノブラー(Gnoblar)、バイオウェア『ドラゴンエイジ:インクイジション』(二〇一四)、ブラック・アイル・スタジオ『バルダーズ・ゲート』シリーズ(一九九八-)で展開される。