
ワイト
Wight · 古墳の死者 — 墓の宝を守る呪われた死体
ワイト(英語Wight 古墳ワイトはBarrow-wight)は古墳や塚に埋葬されたる屍が宝への執着と呪いに因りて起ち上がりたる墓地不死者にて 無形の幽鬼(レイス)と異なり屍の形を保つ自覚型不死者の正典図像である。語源は古英語wiht(生物 存在)に由来し — 八世紀古英語叙事詩ベオウルフ(Beowulf)等に登場する一般的 存在 の意味が — 後代に墓地不死者の特定の意味として定着した。図像学的起源は十三から十四世紀のアイスランド家族サガのドラウグル(draugr 歩く屍)とハウグブイ(haugbúi 古墳居住者)にて 最も決定的英文学正典は千九百五十四年七月J.R.R.トールキン(J.R.R. Tolkien 千八百九十二年から千九百七十三年)の指輪物語・旅の仲間(The Fellowship of the Ring)第一部八章 古墳丘の霧(Fog on the Barrow-Downs)にて — フロドとホビット達が古い森の東の古墳丘にて古墳ワイトに捕らわれて副葬品と共に埋葬される危機に陥るも トム・ボンバディルの歌にて救出される筋 — が現代幻想ワイト図像の決定的正典を確立した。千九百七十七年一月ゲイリー・ガイギャックス(Gary Gygax)のAD&Dモンスター・マニュアル(Monster Manual)にワイトが加えられて — 自らに殺された者を同族ワイトとなす生気吸収能力 — が現代RPG正典となった。
起源
図像学的起源は十三から十四世紀のアイスランド家族サガ(Íslendingasögur)のドラウグル(draugr)とハウグブイ(haugbúi)にある。最も決定的サガ・テキストは十三世紀作グレティルのサガ(Grettis saga)のグラム(Glámr) — 死後古墳に埋葬されたるも起ち上がりて農場を荒廃せしめたるも英雄グレティルに斬首されたるドラウグル — と十四世紀作ヘルヴァラル・サガ・オク・ヘイドレクス(Hervarar saga ok Heiðreks)のアンガンテュル(Angantýr) — 娘ヘルヴェル(Hervör)が父アンガンテュルの古墳に入りて魔剣テュルフィング(Tyrfing)を要求すれば死せし父が古墳の中より応じる場面 — が北欧ワイト図像の正典である。十三世紀作エイルビュッギャ・サガ(Eyrbyggja saga)のソロルフ・ベギフォト(Þórólfr Bægifótr)が死後ドラウグルとなりて村を悩ます箇所も時代正典である。八世紀古英語叙事詩ベオウルフ(Beowulf)に登場するwiht(存在 生物)は — 一般語彙なるも後代英文学にて墓地不死者の語源となりたる — 語彙的起源である。最も決定的なる現代正典化は千九百五十四年七月二十九日英国アレン・アンド・アンウィン(Allen & Unwin)にて出版されたるJ.R.R.トールキンの指輪物語・旅の仲間第一部八章 古墳丘の霧 — ホビットのフロド サム メリー ピピンが古い森の東の古墳丘(Barrow-downs)にて古墳ワイトに捕らわれて黄金の副葬品と共に埋葬される危機に陥るも トム・ボンバディルの歌にて救出される筋 — が現代英文学ワイト図像の決定的正典を確立した。
特徴
- 干乾びたる屍と冷たく光れる眼
- 氷の如き手と呪いの接触
- 古墳と塚の副葬品を守る
- 生者の生気を吸いて同族ワイトと成す吸収能力
- 無形の幽鬼と異なり屍の形を保つ
- 古墳侵入者に対する呪いの応報
物語
千九百五十四年J.R.R.トールキンの指輪物語・旅の仲間第一部八章 古墳丘の霧 が現代英文学ワイト図像の決定的正典にて — フロドとホビット一行が古墳ワイトに捕らわれて黄金の副葬品と共に埋葬される危機に陥るも トム・ボンバディルが歌う 出でよ 古きワイトよ 日光の中に消えよ(Get out, you old Wight! Vanish in the sunlight!)の歌にて救出される筋 — が後続幻想ワイト表象の原型となった。トールキンのワイトは — 千九百二十三年の詩 宝(The Hoard)と千九百六十二年の詩集トム・ボンバディルの冒険(The Adventures of Tom Bombadil)に再録されたる — トールキンがオックスフォード英文学教授として十三から十四世紀アイスランド・サガのドラウグルを英文学ワイト語彙として復活させたる学術的借用の正典的事例である。千九百七十七年一月ゲイリー・ガイギャックスのAD&Dモンスター・マニュアル初版百頁にワイトが加えられて — 触れれば生者の生命力レベルを吸収して死せる者が新たなるワイトとして復活する能力 日光に弱く魔法武器のみが被害を与う設定 — が現代幻想RPG正典となった。千九百九十六年ジョージ・R.R.マーティン(George R.R. Martin)の氷と炎の歌(A Song of Ice and Fire)シリーズと千二千十一年HBOドラマ王座のゲーム(Game of Thrones)にて — 北部の壁の向こうのワイト軍勢と白歩く者が生者を吸収して同族化 — が二十一世紀ワイト図像の決定的正典となり 千二千十一年ベセスダのビデオゲーム・エルダー・スクロールズV・スカイリム(The Elder Scrolls V: Skyrim)のドラウグルがノルディック墓正典である。
弱点
ワイトの弱点は ① 日光 — 千九百五十四年トールキン正典にてトム・ボンバディルの 日光の中に消えよ の歌にてワイトが消滅し 千九百七十七年D&D正典にてワイトが日光に晒されれば即座に弱まりて逃げ去る設定 ② 浄化と聖別されたる武器 — 千九百七十七年D&Dにて普通の武器は被害を与えず魔法武器あるいは銀製の武器のみがワイトを害する動機 ③ 火 — 十三世紀アイスランド・サガにてドラウグルの屍を火葬すれば鎮魂さるとの正典が千九百九十六年ジョージ・R.R.マーティンの氷と炎の歌のワイトがヴァリリア鋼・ドラゴングラス(黒曜石)・火に弱しとの設定として継承 ④ 宝の返還と墓の鎮魂 — ワイトが守れる副葬品が本来の主に戻るか墓が正当なる鎮魂儀礼を受ければ安息 — 十三世紀ヘルヴァラル・サガにてヘルヴェルが父アンガンテュルの剣テュルフィングを正当なる相続人として要求すればアンガンテュルが剣を譲るとの正典 ⑤ 神聖なる歌と祈り — トールキンのトム・ボンバディルが歌う歌がワイトを鎮魂する正典的図像。
文化的・歴史的意義
ワイトは北欧サガ文学と十九から二十世紀英文学と現代幻想ゲームが融合せし墓地不死者の正典的図像である。十三から十四世紀のアイスランド家族サガのドラウグル正典は — ヴァイキング時代(八から十一世紀)の古墳埋葬風習と副葬品信仰の文学的凝縮 — として人類学的に分析され ノルウェー・アイスランド・デンマークの青銅器から鉄器時代の古墳発掘事例約二千件がワイト信仰の考古学的基盤である。J.R.R.トールキンの千九百五十四年指輪物語はオックスフォード英文学教授が学術的借用にて十三世紀アイスランド・サガのドラウグルを二十世紀英文学ワイトとして復活させたる決定的事例にて トールキンの千九百五十三年友人W.H.オーデン(W.H. Auden)に送りたる手紙にて 我がワイトはアイスランドのドラウグルを模範とした との自己陳述がある。千九百九十六年ジョージ・R.R.マーティンの氷と炎の歌シリーズはトールキンのワイト正典を二十一世紀幻想文学の核心図像として復活させ 千二千十一年HBOドラマ王座のゲームのシーズン八(千二千十九年四月から五月)最後に登場するワイト軍勢のウィンターフェル侵攻戦闘が — 視聴者一千八百万人を突破せしHBO史上最高興行 — ワイト図像の二十一世紀グローバル正典となった。千九百七十七年D&Dから千二千十一年スカイリムに至る遊戯正典がワイトをRPG・MMORPG標準不死者図像として位置付けた。
ポップカルチャーでの登場
古英語ベオウルフ 八世紀頃 — wiht語彙起源グレティルのサガ グラム 十三世紀 — アイスランド・サガ・ドラウグル正典エイルビュッギャ・サガ ソロルフ・ベギフォト 十三世紀 — サガ・ドラウグル正典ヘルヴァラル・サガ アンガンテュル 十四世紀 — 古墳居住者正典(娘ヘルヴェルの剣テュルフィング要求)J.R.R.トールキン 指輪物語 古墳丘の霧 千九百五十四年 — 英文学ワイト決定的正典トールキン詩 宝 千九百二十三年 トム・ボンバディルの冒険 千九百六十二年 — トールキン・ワイト詩正典ゲイリー・ガイギャックス AD&Dモンスター・マニュアル 千九百七十七年 — 現代RPGワイト正典化ジョージ・R.R.マーティン 氷と炎の歌 千九百九十六年から — 二十一世紀幻想ワイト決定的正典ベセスダ エルダー・スクロールズV・スカイリム 千二千十一年 — ノルディック・ドラウグル遊戯正典

