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ghoul
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グール

Ghoul · 食屍鬼 — 墓を暴いて死体を食らう砂漠の怪物

グール(英語 ghoul アラビア語 ghūl)は屍を漁る食屍怪物にして砂漠と墓地の変身食人鬼である。イスラム以前(ジャーヒリーヤ 六世紀以前)のアラビアのベドウィン民譚に由来し 千一夜物語(Alf Laylah wa-Laylah 九世紀編纂)を経て十八世紀以降西欧恐怖正典に定着した図像である。語源はアラビア語 ghūl にて 掴む 引き攫う を意味する動詞 ghāla に由来する。アラビア民譚にてグールは砂漠に出没して旅人を誘き寄せて食らうジン(jinn)系列の悪なる精霊にて 人間あるいは獣(特に鬣狗 ハイエナ)に変身する能力を持ち 墓地を掘りて屍を食らう。一七〇四年から一七一七年アントワーヌ・ガラン(Antoine Galland)の仏訳千一夜物語と 一七八六年ウィリアム・ベックフォード(William Beckford)の哥特小説 ヴァテック(Vathek) 一八一三年バイロン卿(Lord Byron)の詩 異教徒(The Giaour) がグール図像を西欧文学に導入し 一九二七年H・P・ラヴクラフト(H. P. Lovecraft)の短編 ピックマンのモデル と 未知なるカダスを夢に求めて が現代恐怖のグール正典を確立した。

起源

図像学的起源はイスラム以前(ジャーヒリーヤ 六世紀以前)のアラビアのベドウィン民譚にある。グールはジン(精霊)分類の悪なる変種にて — 詩人タアッバタ・シャッラン(Ta'abbata Sharran 六世紀ジャーヒリーヤ時代詩人)の詩にグールとの決闘が登場するのが最も早い文献である。グールは砂漠の隔絶せし路に出没して旅人に道を誤らせ あるいは魅惑なる女の姿にて誘い寄せて食らう。女性形グーラ(ghūlah)は特に魅惑なる女に変身して若者を誘き寄せて食らう情緒が定着した。九世紀編纂の千一夜物語 中の シディ・ヌウマンの物語 にて主人公の妻アミナがグールにて 墓地を掘りて屍を食らう場面が露見する筋がグール図像の決定的正典を確立した。七世紀イスラム到来以後グールはジンの一種として古蘭経注釈(タフシール)とアル・ジャーヒズ(al-Jahiz 七八一年から八六八年)の 動物誌(Kitab al-Hayawan)等アッバース朝百科事典に体系化された。一七〇四年から一七一七年アントワーヌ・ガランの仏訳千一夜物語と 一八八五年リチャード・フランシス・バートン(Sir Richard Francis Burton)の英訳本がグール図像を西欧正典に定着させた。

特徴

  • 砂漠 廃墟 墓地に棲息して屍を食らう
  • 人間 ハイエナ 魅惑なる女等に変身
  • 砂漠の隔絶せし路にて旅人を誘い寄せて食らう
  • ジン(jinn)系列の悪なる精霊として分類されるアラビア民譚
  • 女性形グーラ(ghūlah)は若者を誘惑する情緒
  • 現代恐怖と幻想に屍を食らう下級不死者種族として再定義

物語

九世紀編纂の千一夜物語の シディ・ヌウマンの物語 がグール図像の決定的文学正典にて — 主人公の妻アミナが毎夜眠れる間に墓地に往きて屍を食らう食屍鬼にて 真相が露見する筋が後続グール表象の原型となった。一七八六年ウィリアム・ベックフォードの哥特小説 ヴァテック が英語圏最初のグール導入にて 一八一三年バイロン卿の詩 異教徒 が 'And like the ghoul, must drag thy corse from out the recent grave' の一節にて英詩正典に定着させた。一八八五年リチャード・フランシス・バートンの アラビアン・ナイト 十六巻英訳本がグール図像の英語圏決定的正典である。一九二七年H・P・ラヴクラフトの短編 ピックマンのモデル と 未知なるカダスを夢に求めて がグールをクトゥルフ神話(Cthulhu Mythos)の核心種族として再定義し — ボストン地下墓地の食屍鬼にて人間が変じてグールとなる変身情緒 — 現代恐怖のグール正典を確立した。一九七四年ゲイリー・ガイギャックス(Gary Gygax)の ダンジョンズ・アンド・ドラゴンズ(Dungeons & Dragons)初版がグールを麻痺爪を持つ下級不死者種族として遊戯化し 現代幻想RPG図像の標準となった。二〇一一年石田スイの漫画 東京喰種(東京グール)と二〇一四年同名アニメが日本恐怖にグールを導入した。

弱点

グールの弱点は ① 光と太陽 — アラビア民譚にてグールは夜の砂漠に出没し 日光に晒されれば変身能力を失いて衰える ② 屍の不在 — 屍を食らえねば飢えて衰え 終には消滅 ③ イスラム浄化儀礼 — 古蘭経朗誦と回教寺院附近にては活動が制限され アッラーの名を呼ぶ祈り(バスマラ)がグールを退けるという民間信仰が定着した ④ 単独にては脅威薄し — D&D等現代幻想にてグールは群れて出没する下級不死者として分類され 単体は中級冒険者にも脅威薄し。ラヴクラフト クトゥルフ神話のグールは地下墓地の闇の中にてのみ活動し — 未知なるカダスを夢に求めて にて主人公ランドルフ・カーターがグールの群れと協力するもグールは光に満ちたる地上世界に足を踏み入れざる設定 — 光が決定的弱点として図像化された。

文化的・歴史的意義

グールは単なる恐怖図像ではなく アラビア イスラム 西欧オリエンタリズムが交錯する文化横断の正典的事例である。イスラム以前ジャーヒリーヤ時代アラビアのベドウィン民譚の砂漠精霊信仰が七世紀イスラム到来後ジン(jinn)神学に体系化され 十八世紀ガラン 十九世紀バートンの千一夜物語訳が欧州浪漫主義 哥特文学を経て二十世紀ラヴクラフトのクトゥルフ神話 D&D幻想に定着して東より西へ横断した。一九七八年エドワード・サイード(Edward Said)の オリエンタリズム(Orientalism)批評が十八から十九世紀欧州の東方表象 — ガラン バートン訳のグール ジン図像も含む — を西欧の東方他者化機制として分析した正典的事例である。一九二七年ラヴクラフトのグール再解釈はボストン出身の画家リチャード・アプトン・ピックマンがグールに変じる変身情緒を通じて 人種 階級 身体的腐敗に対する二十世紀初米国白人中産階級の恐怖を凝縮したものと批評される。二〇一一年石田スイの 東京喰種 は日本社会の少数者 在日外国人等社会的他者に対する寓意として解されアラビアグールの食人情緒を現代日本都市社会に移植した。

ポップカルチャーでの登場

タアッバタ・シャッラン詩 六世紀ジャーヒリーヤ時代 — グール登場最古文献千一夜物語 シディ・ヌウマンの物語 九世紀編纂 — 食屍グール図像の決定的正典アル・ジャーヒズ 動物誌 九世紀 — アッバース朝ジン分類体系化ウィリアム・ベックフォード ヴァテック 一七八六年 — 英語圏最初のグール導入バイロン卿 異教徒 一八一三年 — 英詩正典定着リチャード・フランシス・バートン アラビアン・ナイト英訳本 一八八五年 — 英語圏決定的正典H・P・ラヴクラフト ピックマンのモデル と 未知なるカダスを夢に求めて 一九二七年 — クトゥルフ神話グール正典ゲイリー・ガイギャックス ダンジョンズ・アンド・ドラゴンズ 一九七四年 — 現代幻想RPGグール標準化石田スイ 東京喰種(東京グール) 二〇一一年 — 現代日本漫画グール導入