LoreArc

西洋ドラゴン

「西洋ドラゴン」タグが付いたアイテム 13件

🐉ドラゴン(13)
fafnir

ファーヴニルは北欧神話に登場する悲劇の竜で、十三世紀後半アイスランドの『ヴェルスング・サガ』および『古エッダ』の「レギンスマール」「ファーヴニスマール」に記録される。両資料は西暦1270年頃のコデクス・レギウス(Codex Regius, GKS 2365 4to)写本に保存され、現在レイキャビクのアウルニ・マグヌッソン研究所が所蔵する。同じ題材は十三世紀初頭の中高ドイツ語叙事詩『ニーベルンゲンの歌』でも、ジークフリートが斃す宝物の竜として再話される。元はドワーフ王フレイズマルの息子であったファーヴニルは、神ロキが過失でカワウソに変身した兄弟オトルを殺した代償として持参した黄金宝物 — ドワーフ・アンドヴァリ(Andvari)の呪いを帯びた指輪アンドヴァラナウト(Andvaranaut)を含む — に取り憑かれ、父を殺し弟レギンを追放し、毒を吐く脚なしの大蛇(wyrm)型の竜に変じて黄金の上にとぐろを巻く。英雄シグルズはレギンが鍛えた剣グラム(Gramr)を携え川岸の道に落とし穴を掘って待ち伏せ、竜の鱗のない腹を下から突いて斃す。竜の血を飲んだシグルズは鳥の言葉を解し、心臓を焼いて食べた後すべての知恵を得る。リヒャルト・ワーグナーの『ニーベルングの指環』(1869-1876)とJ.R.R.トールキンの『ホビット』(1937)のスマウグの直接の原型である。

smaug

スマウグ(Smaug、The Golden / The Magnificent / The Tremendous)はJ.R.R.トールキンの一九三七年の小説『ホビット、または往きて還りし物語(The Hobbit, or There and Back Again)』に登場する黄金欲の火竜であり、現代ファンタジーにおける『宝の山の上に眠る火竜』図像の直接の原型である。深紅の鱗、コウモリの翼、二本の脚(つまり厳密な紋章学分類ではワイバーン)に火炎ブレスを備える邪悪な竜で、第三紀二七七〇年頃に孤山(エレボール)のドワーフ王国デュリンの民を襲撃し、スロール(Thrór)王家を虐殺し、孤山の宝物 — アーケン石(Arkenstone)を含む — を奪い、その上に横たわって眠りについた。約一七〇年後、ホビットのビルボ・バギンズ、ソリン・オーケンシールド率いる一三人のドワーフ遠征隊、そして魔法使いガンダルフが孤山へ向かう冒険の中で、ビルボは『ホビット』第一二章『内部からの情報(Inside Information)』でスマウグと宝の山の中で対面し、その左胸の鱗の抜けた一点を発見する。情報は老ツグミ(thrush)を介して湖の町(エスガロス)の人間の弓手バード(Bard the Bowman)に伝わり、家伝の『黒い矢(Black Arrow)』が正確に命中、スマウグは湖の町に墜ちて死に、その遺骸は湖底に沈む。死後に起こった『五軍の合戦(Battle of the Five Armies)』が『ホビット』の頂点を成す。

vritra

ヴリトラ(サンスクリット語Vṛtra)はヴェーダ・インド神話における最強の悪龍(アスラ)であり、現存する文献における印欧比較神話学のカオスカンプ(嵐神対多頭蛇)モチーフの最古の典籍例である。サンスクリット名はそのまま動詞語根『vṛ』(『覆う、囲む』)に由来し、『包囲する者、せき止める者』を意味する。形態は巨大な脚なし蛇(ahi、『蛇』)、あるいはとぐろを巻く山として描かれる。本来の役割は旱魃の化身であり、インド亜大陸の七大河(サプタ・シンドゥ、Sapta Sindhu)を自身の体で堰き止めて人類に渇きと死をもたらす。九十九の同心要塞(pura)に囲まれた居所に住む。雷神インドラの永遠の宿敵で、ヴェーダ神話最大の戦闘『リグ・ヴェーダ』第一巻三二歌『インドラ・ヴリトラ・ユッダ(Indra-Vṛtra-yuddha)』 — 十五詩節 — に最も詳細に記される。インドラは神々の鍛冶神トヴァシュトリ(Tvaṣṭṛ)から授かったヴァジュラ(vajra、『金剛杵』『雷』)で九十九の要塞を破り、ヴリトラの頭を断ち斬る。ヴリトラの体内に閉じこめられていた七つの大河が流れ出し、インド亜大陸を潤して人類文明が始まったとされる。後代のヒンドゥー教 — 紀元一-四世紀の『マハーバーラタ』ウディヨーガ・パルヴァ、八-十世紀の『バーガヴァタ・プラーナ』 — ではヴリトラはトヴァシュトリの息子ヴィシュヴァルーパ(Viśvarūpa)の弟と再定義され、本来はインドラの友であったが神々の謀略によって殺害された悲劇的人物として描かれる。

red-dragon

レッド・ドラゴンはダンジョンズ&ドラゴンズの五色の悪のドラゴン(クロマティック)の頂点であり、西洋ファンタジーで最も象徴的かつ恐るべき存在である。1974年TSR『Dungeons & Dragons』オリジナル箱入りセットの『モンスターと宝物』分冊において、ゲイリー・ガイギャックスとデイヴ・アーネソンが火山・山岳領を支配する火炎吐息ドラゴンの頂点として導入し、1977年AD&D『モンスターマニュアル』以後、整列は混沌にして悪に固定された。2014年第五版『モンスターマニュアル』基準で成体レッド・ドラゴンは体長二十五-三十メートル、挑戦評価十七、六十フィート(約十八メートル)円錐火炎ブレスで十八d六の損傷を与え、古代レッド・ドラゴンは挑戦評価二十四、九十フィート円錐ブレス、二十六d六の圧倒的火力を誇る。現代的図像の正典はJ.R.R.トールキン『ホビット(一九三七)』のスマウグ — 孤山(エレボール)の宝物の上にとぐろを巻く深紅の竜 — であり、AD&Dの色分類はスマウグの図像を直接借用したと評価される。同一の系譜はドラゴンランスの闇の女王タキシス、『マジック:ザ・ギャザリング(一九九三-)』のシヴァン・ドラゴン、バルダーズ・ゲート3(二〇二三)の古代レッド・ドラゴン遭遇にまで継承されている。

lernaean-hydra

レルナのヒドラ(古代ギリシア語Λερναία Ὕδρα、ラテン語Hydra Lernaea)はギリシア神話における最も象徴的な多頭の怪物で、ヘラクレス(Heracles)がミュケナイ王エウリュステウス(Eurystheus)に課された十二の功業のうち第二の試練の対象である。その出生はヘシオドス(紀元前八世紀後半)の『神統記(Theogonia、紀元前七三〇年頃)』三一三-三一八行に明記されており、巨大な蛇エキドナ(Echidna)と嵐の巨人テュポン(Typhon)の子、ケルベロス・キマイラ・ネメアの獅子と兄弟であり、ヘラ(Hera)がヘラクレスへの敵意のために育てたとされる。正典では頭は九つあり、中央の頭は不死の神性を帯びるとプセウド・アポロドロス(Pseudo-Apollodoros)の『ビブリオテケ(Bibliotheke)』第二巻五章二節(紀元前二世紀)に確定されている。決定的な能力は再生力 — 切断された各首から二つの新しい頭が生えてくる。ヘラクレスは甥にして御者イオラオス(Iolaus)の助けを借り、切断面を松明で即座に焼灼することで再生を阻止して討伐し、最後の不死の頭は切り落として巨石の下に封印した。ヒドラの毒の血はヘラクレスの矢に塗られ、後にケンタウロスのネッソス、巨人アンタイオス、そして最終的にヘラクレス自身の死因となる。住処はペロポネソス半島東部アルゴリス地方のレルナ(Lerna)沼地で、現在のアルゴス南方約十キロ、ミュロイ村近郊の考古遺跡として保存されている。

wyrm

ワーム(wyrm、古英語wyrm、古ノルド語ormr、古高ドイツ語wurm)は脚も翼もない原始的な蛇形の巨大龍で、ゲルマン・北欧神話における最も古い龍図像であり、後世のクロマティック・ドラゴンや紋章学のワイバーン分類とは別個の形態系統を成す。語源は印欧祖語の語根『*wérmis(虫、蛇)』にまで遡り、ラテン語vermis、サンスクリット語krmiと同根である。古英語叙事詩『ベーオウルフ(Beowulf)』(現存単一写本、大英図書館Cotton MS Vitellius A.xv、約一〇〇〇年頃)の末尾(二二〇〇-三一八二行)で、五十年間山中の洞窟で宝を守り、盗まれた杯に激怒して村を焼く老龍が『wyrm』と記される。最も有名な事例は十三世紀後半アイスランドの散文エッダ『スノッリ・エッダ(Snorra Edda、1220年頃スノッリ・ストゥルルソン編)』のギュルヴィたぶらかし(Gylfaginning)第三十四章と『古エッダ(Sæmundar Edda)』が記録するヨルムンガンドル(Jǫrmungandr、『巨大な杖』『巨大な棒』)、すなわちミッドガルド(Miðgarðr)の海を取り囲む世界蛇で、自身の尾を口に咥えて人間世界全体を巻き、ラグナロク(Ragnarǫk)の最終決戦で雷神トール(Þórr)と運命的な相打ちを迎える。英国の地方伝承では、ダラム州ペンショーのランブトン・ワーム(Lambton Worm、一四世紀十字軍出身の存・ランブトン卿が魔女の助言で処置、一八六七年バラッド出版)、サセックスのリミンスター・ナッカー(Lyminster Knucker、九世紀サクソン領主が処置)、デヴォン州のシャーボーン・ワーム(Sherborne Wyrm)など、地方単位の巨大蛇伝承が豊富である。