
ペリディン
Peridini · 架空の生物 — 実在しない存在
他言語での名称
- 페리톤한국어
Peryton · 보르헤스가 정리한 사슴 몸·새 날개의 환상 동물
- PerytonEnglish
Borges's Imaginary Stag-Bird Hybrid
- 佩里丁繁體中文
Peridini · 虛構生物 — 非真實存在
- PeridinDeutsch
Peridini · Fabelwesen — Nicht real existierend
- PéridineFrançais
Peridini · Créature imaginaire — N’existe pas réellement
- PeridínEspañol
Peridini · Criatura imaginaria — No es real
- PeridiniPortuguês
Peridini · Criatura imaginária — Não existe de fato
- PeridynPolski
Peridini · Istota wyimaginowana — Nie istnieje naprawdę
- ПеридинРусский
Peridini · Воображаемое существо — Не существует в реальности
ペリュトン(Peryton)は阿根廷の作家ホルヘ・ルイス・ボルヘスとマルガリータ・ゲレロが一九五七年共著の幻獣辞典(Manual de zoologia fantastica)に正式項目として収録した合成幻獣である。鹿の身体と頭部に巨大な暗碧の羽を持つ鳥の翼を有し、最も特異な点は太陽光下で投じる影が自身の影ではなく人間の影であることにある。ボルヘスは一六世紀フェズの架空のアラブ医師の手記断片と、ラヴェンナに保存されたとする架空のエリュトライア・シビュラ予言断片を典拠として引用し、ペリュトンは元来人間であり、一人の人を殺し終えてはじめて自身の影を投じる権利を得ると述べる。一九六七年増補版幻想生物の書 El libro de los seres imaginarios として再刊され、一九六九年のノーマン・トーマス・ディ・ジョヴァンニ英訳を経て、一九八三年ゲイリー・ガイギャックスのダンジョンズ・アンド・ドラゴンズ怪物図鑑Ⅱ収録で現代幻想の正典となった。
起源
ペリュトンは一九五七年ブエノスアイレスの出版社 Fondo de Cultura Economica より刊行されたボルヘスとマルガリータ・ゲレロ共著の幻獣辞典(Manual de zoologia fantastica)約八〇項目のうち一項として初出する。ボルヘスは項目内で一六世紀モロッコのフェズに居たアラブ医師の手記断片と、ラヴェンナに保存されたとするエリュトライア・シビュラの予言断片を架空の引用源として提示する。これはボルヘスがトレーン ウクバール オルビス テルティウス一九四〇年 短篇集フィクション一九四四年 アレフ一九四九年などで一貫して用いた架空典拠技法の典型であり、ペリュトンという獣自体はボルヘスの純粋文学創作であると学界が合意する。一九六七年増補版 幻想生物の書 El libro de los seres imaginarios として再出版され、一九六九年ノーマン・トーマス・ディ・ジョヴァンニの英訳 The Book of Imaginary Beings により英語圏に伝わり、一九八三年ゲイリー・ガイギャックスのダンジョンズ・アンド・ドラゴンズ怪物図鑑Ⅱに正式収録され現代幻想ゲームの正典となった。
特徴
- 鹿の身体 脚 頭部に暗碧の羽根を持つ大鳥の翼
- 陽光下で投じる影が自身ではなく人間の影
- 一人を殺すことではじめて自身の影を獲得
- 群で飛行し殺害を終えた個体は人間を再襲撃しない
- 本来人間であり変身したとの引用伝承
- 大洋の彼方の不詳の島に住むという架空の生息地
物語
一九五七年初版以来、ペリュトンはラテンアメリカ幻想文学の象徴的図像となり、一九六九年英訳以後はアーシュラ・K・ル・グィンやイタロ・カルヴィーノら同時代作家にも言及された。一九八三年ダンジョンズ・アンド・ドラゴンズ怪物図鑑Ⅱに正式収録され幻想ゲームの正典怪物となり、その後マジック・ザ・ギャザリングのカード意匠やザ・ウィッチャーの図鑑など多数の作品に波及した。ボルヘスの架空典拠技法そのものが学界と創作界で標準化され、ペリュトン項目は幻想文学創作講義における架空典拠の模範事例として今日も引用される。
弱点
本文自体が断片的設定に留まるため、明示的弱点はほぼ定められていない。ボルヘスの架空典拠引用によれば、一匹のペリュトンが一人の人間を殺せばその影を永久に得るため、それ以後人間を襲うことはなくなる。したがってすでに殺害を終えたペリュトンは脅威ではない。影の本質が人間にあるという設定は後続の幻想ゲームでペリュトンが神聖魔法 浄化儀礼 鹿を敵視する狩猟護符などに弱いとの変形として拡張されたが、これらは一九八三年ダンジョンズ・アンド・ドラゴンズ以後のゲーム機構レベルの付加であり、ボルヘス原典には存在しない。
文化的・歴史的意義
ペリュトンは単なる獣ではなく、架空典拠を通じた幻想文学正典化の事例であり、ボルヘスが生涯追究した偽の引用 迷宮 鏡の動機の動物学的結晶である。シビュラ予言という架空典拠においてペリュトンがローマ帝国を滅ぼすという設定は、ボルヘスが一九四〇年代の短篇で錬磨した架空史技法の動物誌版である。一九五七年初版が有したラテンアメリカ幻想文学の影響力は一九六〇年代魔術的リアリズムへと継承され、一九八三年ダンジョンズ・アンド・ドラゴンズ正典化以後ペリュトンは幻想ゲーム 小説 漫画の標準怪物となった。ボルヘスの書庫からゲーマーの机へ移行した幻獣学の代表例である。学界はペリュトンを偽典拠引用法 pseudo-source citation の本見本として引用する。
ポップカルチャーでの登場
- ホルヘ・ルイス・ボルヘスとマルガリータ・ゲレロ 幻獣辞典 Manual de zoologia fantastica 一九五七年 ペリュトン項目初出
- ボルヘス増補版 幻想生物の書 El libro de los seres imaginarios 一九六七年 項目補完再出版
- ノーマン・トーマス・ディ・ジョヴァンニ英訳 The Book of Imaginary Beings 一九六九年 英語圏定着
- ゲイリー・ガイギャックス ダンジョンズ・アンド・ドラゴンズ怪物図鑑Ⅱ 一九八三年 幻想ゲームの正典化
- ジョン・クルートとジョン・グラント 幻想文学百科事典 The Encyclopedia of Fantasy 一九九七年 項目収録
- マジック・ザ・ギャザリング 各種拡張セット ペリュトン カード意匠
- ザ・ウィッチャー ゲーム シリーズ ゲーム内図鑑 ペリュトン項目
豆知識
ボルヘスはペリュトン項目内で架空の一六世紀フェズのアラブ医師手記と、ラヴェンナに発見されたとするエリュトライア・シビュラ断片を典拠として提示した。両典拠とも学界がボルヘスの純粋創作と確定する架空引用であり、これは彼がトレーン ウクバール オルビス テルティウス一九四〇年で確立した代表的技法である。ペリュトンという名の語源についてボルヘス自身は説明を残しておらず、希臘語 perimetros 周囲 や羅典語 perire 滅ぶ との関連説が評論家の間で分分しているが学界の合意はない。一九八三年ゲイリー・ガイギャックスがダンジョンズ・アンド・ドラゴンズ怪物図鑑Ⅱに収録した際、ボルヘス原典には存在しない設定 ペリュトンは人間の心臓を喰らうことで影を得る が加えられ、以後すべての幻想ゲームにおけるペリュトン図像の標準となった。
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