LoreArc
war-hammer
1 / 1
ウォーハンマー すべて見る

ウォーハンマー

板金鎧を破壊する打撃武器

ウォーハンマーは、中世後期に発達した板金鎧に対抗するために作られた対甲冑専門の打撃武器である。頭部は二つに分かれ、一方は平らか刻みの入ったハンマー面で重い衝撃を伝え、もう一方は鋭いスパイク(フランス語で嘴を意味するベック)で鎧を貫く。剣が硬い板金を斬れない状況で、ウォーハンマーは二つの道で敵を崩す — ハンマー面で打ち下ろし、鎧が貫けなくともその衝撃を鎧越しに体へ伝えて骨を折り、あるいは意識を失わせ、スパイクでは兜や関節といった弱点や比較的薄い板を貫く。片手で扱う約60~90cmのものから、ポールアーム形の120~180cmのものまで様々で、片手形はおおむね約1~2.5kgだった。

起源

ウォーハンマーは14世紀のヨーロッパで板金鎧が急速に発達するなかで現れた。鎖帷子が硬い鋼の板に取って代わると、剣の斬撃ではもはや鎧を貫けなくなり、衝撃と貫通を同時に加える専門の対甲冑武器が必要になったからである。中世フランスではこうした鉄製の槌の武器を『マルテル・ド・フェル(鉄の槌)』と呼んだ。15~16世紀に完全板金鎧が一般化すると、騎士から歩兵まで広く備える必須の武器となり、馬上で用いる短いホースマンズ・ピックから、両手で振るうポールハンマー・ベック・ド・コルバン・ルツェルン・ハンマーのようなポールアーム形まで、様々な形に発展した。

特徴

  • ハンマー面(衝撃)とスパイク(貫通)の二重の頭部
  • 片手用(約60~90cm)とポールアーム形(約120~180cm)が存在
  • 板金鎧に特化した対甲冑武器
  • 衝撃で鎧越しの体に骨折・内傷を生じさせる
  • スパイクで兜・関節などの弱点や薄い板を貫く
  • 重さ約1~2.5kg(片手用基準)

物語

ウォーハンマーの真価は完全武装した敵を前に発揮された。剣がただ弾かれてしまう相手に対し、兵はハンマー面を力いっぱい振り下ろし、鎧が貫けなくともその衝撃を体まで伝えて骨を折り、あるいは敵をよろめかせた。そうして敵の均衡を崩したのち、反対側のスパイクを兜の視界窓、脇・肘・膝といった関節の隙間、あるいは比較的薄い板に狙い定めて貫いた。ポールアーム形の長い後方スパイクは、騎乗した敵を引っ掛けて引きずり下ろし、あるいは鎧に打ち込むのに用いられ、馬上のホースマンズ・ピックはすれ違いざまに打ち下ろす一撃に威力を発揮した。

弱点

ウォーハンマーは斬撃ができないため、鎧を着ていない敵に対しては、一度に複数の方向を狙える剣より効率が劣る。頭部が重く、一度振るってから次の動作へ移るまで時間がかかり、外せばその隙に反撃を許しやすい。鋭いスパイクは敵の鎧や体に刺さって抜けないことがあり、一度の決定打のあと武器を回収できない危険もあった。狭い空間や密集した乱戦で大きなポールアーム形を振るいにくいのも難点である。

文化的・歴史的意義

ウォーハンマーは中世後期の鎧と武器の果てしない軍拡競争を象徴する武器である。より硬い鎧が現れれば、それを砕くより重い衝撃武器が続いて現れるという流れの只中に、ウォーハンマーはあった。イングランドの射手たちが1415年のアジャンクールの戦いで大きな槌(モール)を振るったという記録のように、槌の武器は騎士のみならず歩兵にも馴染み深かった。ポーランドでは長い嘴を備えたウォーハンマー『ナジャク』が16~17世紀の貴族(シュラフタ)の身分の象徴かつ携行武器として流行したが、あまりに危険で決闘や乱闘で悪名が高かった。

ポップカルチャーでの登場

ウォーハンマーは重い鈍器の代名詞としてファンタジーやゲームによく登場する。ミニチュアゲームとその世界観から生まれた『ウォーハンマー』というフランチャイズがその名そのものを広く知らしめ、『ワールド・オブ・ウォークラフト』のドゥームハンマーや数多のRPGの大型槌武器がその印象を固めた。ドワーフ種族の象徴的武器として描かれることも多い。ただし創作では、実際には約1~2.5kgほどだった片手ウォーハンマーとは異なり、人の背丈ほどの巨大な両手槌に誇張されがちである。衝撃と貫通を兼ねる対甲冑武器という本来の精巧な設計よりも、『力で砕く鈍器』という印象が強調される傾向がある。

豆知識

  • 中世フランスでは鉄製の槌の武器を『マルテル・ド・フェル(鉄の槌)』と呼び、後方の尖ったスパイクは烏の嘴に似ているとして『ベック・ド・コルバン(烏の嘴)』と呼んだ。
  • ウォーハンマーのハンマー面は、鎧を貫けなくとも衝撃を鎧越しの体まで伝えて骨折や内傷を生じさせる原理で働き、これはメイスやポールアックスといった他の鈍器形の対甲冑武器と共有する核心の発想である。
  • 長い嘴を備えたポーランド式ウォーハンマー『ナジャク』は、16~17世紀の貴族シュラフタの間で身分の象徴かつ携行武器として流行したが、頭蓋骨まで貫く威力ゆえに乱闘や決闘で悪名が高かった。