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longbow
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ロングボウ

イングランド弓兵の象徴的武器

ロングボウは中世イングランドを代表する長弓で、一本のイチイ(yew)を丸ごと削って作る約180cmの大きな弓である。張力80~150ポンド(約36~68kg)の強い力で矢を放ち、熟練した射手は毎分10~12発という驚くべき速度を誇る。有効射程は約200m、最大350mに及び、ボドキンの鏃を用いれば鎖帷子を貫いた。この弓の真の威力は一人ではなく、数百人が一斉に射て空を覆う『矢の嵐(アロー・ストーム)』にあった。百年戦争でイングランドの長弓兵は、この集中射撃で数的に優勢なフランスの騎士軍を繰り返し打ち破った。

起源

ロングボウはもともとウェールズ地方の伝統的な戦争用の弓に由来する。イングランド王エドワード一世(在位一二七二~一三〇七)がウェールズを征服したのちその威力を見てイングランド軍に取り入れ、以後百年戦争(一三三七~一四五三)でイングランドの核心の戦力となった。一三四六年のクレシー、一三五六年のポワティエ、一四一五年のアジャンクールの戦いで、数的に劣勢だったイングランド軍が長弓兵の矢の嵐でフランスの重装騎兵と騎士団を壊滅させ、ロングボウは伝説となった。イングランド王室は弓射を国防の根幹と見て、法で稽古を奨励した。

特徴

  • 一本のイチイ(yew)で作る、長さ約180cm
  • 張力80~150ポンド(約36~68kg)
  • 熟練射手で毎分10~12発の発射
  • 有効射程約200m、最大約350m
  • ボドキンの鏃で鎖帷子を貫通
  • 矢の嵐(アロー・ストーム)の集中射撃戦術

物語

ロングボウの核心の戦術は大規模な野戦での一斉射撃だった。数百人の長弓兵が一斉に矢を射上げ、空を覆う『矢の嵐』を浴びせると、突撃してくる騎兵の馬と人がともに倒れた。何よりロングボウの決定的な強みは発射速度にあった — 毎分10~12発を放つ長弓は、毎分一~三発にとどまる弩(クロスボウ)を圧倒した。一三四六年のクレシーの戦いで、雨に濡れたジェノヴァの弩兵がイングランドの長弓手に一方的に崩れたのがその端的な例である。鎧を狙うときは細く尖ったボドキンの鏃を、馬や軽装の歩兵には広い鏃を選んで用いた。

弱点

ロングボウの弱点は弓ではなく人にあった。80ポンドを超える強い張力をまともに引くには幼少からの数年の訓練が必須で、熟練の射手を育てること自体が難しかった。長弓兵の遺骨には脊柱の湾曲や左腕の骨の肥大が残るほどである。また雨と湿気で弦がゆるんで威力が落ち、何より十五世紀以降に板金甲冑が発達すると、ボドキンの鏃でも良質な甲冑を貫きにくくなり、火器の普及とともにしだいに戦場から退いた。

文化的・歴史的意義

ロングボウはイングランドの軍事的な自己像と国民的な誇りを象徴する武器である。百年戦争の勝利を支えた長弓兵は、自由民(ヨーマン)階層の誇りと結びつき、平凡な平民が貴族の騎士を倒した『イングランドの武器』として記憶される。一四一五年のアジャンクールの勝利は、シェイクスピアの戯曲『ヘンリー五世』の『聖クリスピンの日』の演説で不滅の物語となり、義の名射手ロビン・フッドの伝説もまたロングボウと切り離せない。こうしてロングボウは単なる武器を超え、イングランドの国家的神話となった。

ポップカルチャーでの登場

ロングボウは中世・百年戦争を扱う作品で象徴的な武器として登場する。ロビン・フッドの物語や『ヘンリー五世』をはじめとするイングランド中世を背景とした映画・ドラマや、『エイジ・オブ・エンパイア』『トータルウォー』のような戦略ゲームで、イングランド長弓兵の『矢の嵐』が繰り返し描かれる。ただし創作ではロングボウの苛烈な張力と、それを扱うための生涯の鍛錬がほとんど反映されず、誰もが容易に射る軽い弓のように描かれがちである。また毎分10発を超える速い発射速度というロングボウの真の強みもあまり描かれない。

豆知識

  • 百年戦争におけるロングボウの決定的な強みは発射速度と物量だった — 熟練射手は毎分10~12発を放って毎分一~三発の弩(クロスボウ)を圧倒し、数百人が作る『矢の嵐』が一三四六年のクレシーで遅いジェノヴァの弩兵を圧倒しフランスの騎士突撃を崩して、ポワティエ・アジャンクールへとつながった。
  • ロングボウはもともとウェールズの戦争用の弓に由来し、イングランド王エドワード一世がウェールズを征服したのちイングランド軍に取り入れ、以後百年戦争でイングランドの象徴的武器となった。
  • イングランド人の二本指の侮蔑(Vサイン)がアジャンクールのイングランド長弓兵に由来するという話(捕らえられた射手の弦を引く指をフランス軍が切ったという説)は広く流布するが、当時の歴史的根拠のない後世の俗説である。