
鱗鎧
金属の鱗を重ねた古代の鎧
鱗甲は小さな金属(あるいは革・角)の鱗を魚の鱗のように重ね、布や革の下地に縫いつけるか紐で留めて作る鎧である。紀元前から用いられたもっとも古い金属鎧の類型の一つで、古代世界の全域に広く広まった。鱗が上から下へ重なって打撃を受け流し、柔軟に動きながらも斬りや矢を防ぐ。ローマのロリカ・スクァマタとサーサーン朝ペルシアの鱗甲が代表的で、各鱗は同じ形なので作るのが比較的単純で、傷んだ鱗だけ取り替えればよく手入れが容易だった。ただし小さな板を下地なしに紐で直接編んで構造をなす『札甲(ラメラー)』とは区別される、鱗を下地に付ける別の方式である。
起源
鱗甲は紀元前の古代近東のメソポタミアとエジプトで初めて現れたと見られる。とりわけアッシリア軍が鱗甲を広く用い、エジプトでは新王国期に採用された。のちスキタイ・ペルシア・ギリシアを経てローマ(ロリカ・スクァマタ)に至るまで古代世界の全域に広まり、サーサーン朝ペルシアの重装騎兵(カタフラクト)もこれを巻いた。小さな鱗を列にして付ける単純な製法のおかげで作りやすく安く、古代から中世まで多くの文明で長く用いられた。
特徴
- 金属の鱗を魚の鱗のように重ねて付ける
- 布または革の下地に鱗を固定
- 柔軟さと防御を併せ持つ構造
- ローマのロリカ・スクァマタなど地域別の変形
- 鱗が同じ形で製作・修理が容易
- 古代から中世まで世界中で使用
物語
鱗甲は古代の歩兵と騎兵がひとしく巻いた汎用の鎧で、内に詰め物の下着を着てその上に巻いた。上から下へ重なった鱗が、打ち下ろす斬りや飛来する矢の衝撃を鱗の表面で受け流し、体を曲げ伸ばす動きを大きく妨げずに上半身を守った。傷んだ部分は鱗を数枚外して新しいものに替えればよく現場修理が容易で、同じ鱗を大量に打って補給できた。ローマ・ペルシア・東方の軍が鎖帷子・板金とともにこの鎧を幅広く運用した。
弱点
鱗甲の慢性的な弱点は鱗が重なる方向から生じる。鱗が上から下へ重なっているため、下から上へ突き上げる攻撃は鱗の隙間をめくってその下へ潜り込める。また鱗を留めた下地の布や紐が切れると、その部位の鱗が一度に剥がれ落ち、鎖帷子のように網全体が持ちこたえる粘り強さに欠ける。鱗が密に重なるぶん、同じ防御力の鎖帷子より重く硬い面もある。
文化的・歴史的意義
鱗甲は人類がもっとも早く、もっとも広く用いた鎧の形の一つである。エジプトとアッシリアからローマ・ペルシアを経て東アジアに至るまで、互いに離れた文明がそれぞれ鱗甲を作って着たという点で普遍性を帯びる。魚の鱗に似たその外見は『鎧らしさ』の原型的な像となり、今日ファンタジーでよく見る『竜鱗の鎧』の視覚的な根でもある。ただししばしば東アジアの鎧を鱗甲と一括りにするが、その多くは下地なしに札を直接編んだ札甲(ラメラー)であるという点で厳密には区別される。
ポップカルチャーでの登場
鱗甲は古代・中世を扱う作品とファンタジーに広く登場する。ローマ・ペルシアを舞台とする映画・ゲームで兵の鎧として描かれ、ファンタジーでは『竜鱗の鎧』のように鱗が重なる外見が、強靭で華やかな防具の象徴として用いられる。ゲームでは鎖帷子と板金の中間の等級の防具としてよく現れる。ただし創作では鱗甲と札甲(ラメラー)を区別しなかったり、鱗の重なる方向のような実際の構造のディテールが正確に反映されないことが多い。
豆知識
- 鱗甲はもっとも古い金属鎧の類型の一つで、古代近東に始まりアッシリア軍が広く用い、エジプトでは新王国期に採用され、スキタイ・ペルシア・ギリシアを経てローマのロリカ・スクァマタへとつながった。
- 鱗甲は札甲(ラメラー)と異なる — 鱗甲は鱗を柔軟な布・革の下地に固定して衣のように着るのに対し、札甲は小さな板を下地なしに紐で直接編んで構造をなし、両者はしばしば混同される。
- 鱗がすべて同じ形で列にして付けるだけでよいため製作と修理(傷んだ鱗だけ交換)が比較的容易で、おかげで古代から中世まで多くの文化で長く用いられたが、上へ突き上げる攻撃が下へ重なった鱗の下に潜り込むのが慢性的な弱点だった。