
ハーフリング
Halfling · 小人族 — 平和な農耕の小さき民
ハーフリング(Halfling)はJ.R.R.トールキンが一九三七年『ホビット、または往きて還りし物語』(George Allen & Unwin、ロンドン、九月二十一日刊)と一九五四-五五年『指輪物語』で創造したホビット(Hobbit)のD&D流の一般名称である。『Halfling』はトールキン自身が『指輪物語』付録Fで『中つ国の人間がホビットを呼ぶ一般呼称』として使用した語彙であり、古英語『half + -ling』(『半分育ったもの』)の合成である。一九七四年TSR『D&D』オリジナル箱入りセットでは『Hobbit』種族として導入されたが、一九七七年七月にソール・ザエンツのトールキン・エンタープライズ(Tolkien Enterprises)が『Hobbit』『Ent』『Balrog』『Mithril』『Nazgûl』の使用について商標権クレームを提起した結果、一九七七年AD&D『プレイヤーズ・ハンドブック』から『Halfling』への改称が行われた(法務事案『Tolkien Estate v. TSR Inc.』、一九七七年七月示談)。外形は第五版『プレイヤーズ・ハンドブック』(二〇一四)基準で身長九〇-一〇五センチ、体重一八-二二キログラム、大きな素足の甲に巻き毛の茶色・金色の毛が生え、靴を履かない厚い皮革の足裏が決定的特徴である。丸顔、巻き毛(茶色・金色・赤色)、平均寿命一五〇年。社会は平和な農耕・牧畜共同体で、シャイア式煙突付き家屋と豊かな七食の食文化(第一朝食、第二朝食、十一時の軽食、昼食、午後茶、夕食、夜食)を維持する。第五版種族特性は+2敏捷性・ハーフリングの幸運(Lucky)・勇敢(Brave)・敏捷性(Halfling Nimbleness)で、ライトフット(+1魅力・隠形優遇)とスタウト(+1体力・毒抵抗)の二亜種族が正典。同図像はゲームズワークショップ『ウォーハンマー・ファンタジー』(一九八六-)のハーフリング伯爵領、ブリザード『ワールド・オブ・ウォークラフト』(二〇〇四-)のノーム種族(視覚的派生)、ピーター・ジャクソン監督『ロード・オブ・ザ・リング』三部作(二〇〇一-二〇〇三)・『ホビット』三部作(二〇一二-二〇一四)で英語圏ファンタジーに深く定着した。
起源
直接の典拠はJ.R.R.トールキン『ホビット』(George Allen & Unwin、ロンドン、一九三七年九月二十一日刊)および『指輪物語』(George Allen & Unwin、一九五四-五五)付録Fで、後者は『Halfling』を『中つ国の人間がホビットを呼ぶ一般呼称』として直接使用している。トールキン本人は一九七一年BBC放送インタビューおよび一九六八年『Diplomat』誌インタビューで、ホビットがイングランド・ノース・ミッドランズ地方の田園農民 — 自身の幼少期を過ごしたウォリックシャー(Warwickshire) — から着想を得たことを認めた。一九七四年TSR『D&D』オリジナル箱入りセットでは『Hobbit』種族として導入されたが、一九七七年七月にソール・ザエンツのトールキン・エンタープライズ(一九六九年トールキン映画版権保有社)が『Hobbit』『Ent』『Balrog』『Mithril』『Nazgûl』の使用について商標権クレームを提起した結果、一九七七年AD&D『プレイヤーズ・ハンドブック』から『Halfling』への改称が行われた(法務事案『Tolkien Estate v. TSR Inc.』、一九七七年七月示談)。改称は『フォーゴトン・レルム冒険記』(一九八九)、『プレイヤーズ・オプション:スキル&パワー』(一九九五)、第五版『プレイヤーズ・ハンドブック』(二〇一四)まで一貫して継承され、第五版はライトフット・スタウトに加えてゴーストワイズ・ハーフリング(『ソードコースト冒険者ガイド』二〇一四)とロータスデン・ハーフリング(『ワイルドマウント探検家ガイド』二〇二〇)を追加した。
特徴
- 身長九〇-一〇五センチ・体重一八-二二キログラムの小型体躯
- 大きな素足の甲に巻き毛の茶色・金色の毛 — 靴を履かない厚い皮革の足裏
- 丸顔、巻き毛(茶色・金色・赤色)、平均寿命一五〇年
- 平和な農耕・牧畜共同体とシャイア式煙突付き家屋
- 第五版+2敏捷性・ハーフリングの幸運・勇敢・敏捷性
- ライトフット(+1魅力・隠形)とスタウト(+1体力・毒抵抗)の二亜種族
物語
卓上RPGにおいてシーフ・吟遊詩人・生存専門職業の正典種族として用いられ、平和・安楽志向の哲学により『最も弱く見える者が決定的役割を果たす』英雄物語 — ビルボの孤山冒険、フロドの指輪運搬使命 — の典型となる。同図像はウォーハンマー・ファンタジーのハーフリング伯爵領、『ワールド・オブ・ウォークラフト』のノーム種族(視覚的派生)、ピーター・ジャクソン監督『ロード・オブ・ザ・リング』三部作(二〇〇一-二〇〇三)・『ホビット』三部作(二〇一二-二〇一四)でイライジャ・ウッド、ショーン・アスティン、イアン・ホルム、マーティン・フリーマンの演技により現代的外形が視覚的正典となった。
弱点
小型体躯と限られた筋力により大型種族との正面戦闘で不利であり、安楽志向 — 『冒険と変化を嫌うホビット気質』 — により危機状況に自ら名乗り出るまで時間を要する。第五版基準で筋力ペナルティはないが、平均筋力八-一二の種族的特性が描写される。『ホビット』のビルボが五十歳で初めて冒険に出る事例は、この遅い覚醒の典型である。
文化的・歴史的意義
トールキンが一九三〇年代英国ノース・ミッドランズ地方の田園農民(ウォリックシャー地域)を理想化した結果であり、平和な農耕、豊かな食文化、安楽な家庭への愛着が、D&Dを経由して英語圏ファンタジーの『小柄で平凡な英雄』原型となった。二十一世紀の図像はピーター・ジャクソン三部作によって視覚的に固定され、フロド・ビルボの衣装・足の毛・シルエットが普遍的視覚正典となっている。
ポップカルチャーでの登場
J.R.R.トールキン『ホビット』(一九三七)のビルボ・バギンズ、『指輪物語』(一九五四-五五)のフロド・サム・メリー・ピピン、AD&D『プレイヤーズ・ハンドブック』(一九七七)の『Halfling』種族導入、『フォーゴトン・レルム冒険記』(一九八九)、第五版『プレイヤーズ・ハンドブック』(二〇一四)、『ソードコースト冒険者ガイド』(二〇一四)のゴーストワイズ・ハーフリング、『ワイルドマウント探検家ガイド』(二〇二〇)のロータスデン・ハーフリング、ゲームズワークショップ『ウォーハンマー・ファンタジー』ハーフリング伯爵領(一九八六-)、ピーター・ジャクソン監督『ロード・オブ・ザ・リング』三部作(二〇〇一-二〇〇三)・『ホビット』三部作(二〇一二-二〇一四)。