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gnome
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ノーム

Gnome · 土の小人 — 発明と幻影魔法の匠

ドワーフよりさらに小さい、明るく好奇心の旺盛な種族。機械発明、錬金術、幻影魔法、宝石細工の天才であり、丘の中や深い森の中の工房集落に住み、いたずらと奇想で知られる。族名はパラケルススが没後刊行された『水の精・気の精・地の精・火の精について』(『Liber de Nymphis, Sylphis, Pygmaeis et Salamandris』、Henricpetri、バーゼル、一五六六年)で大地の元素霊として分類した『gnomus』に由来し、ヨーロッパの民間土の精(ドイツの Heinzelmaennchen、ポーランドの krasnoludek、イタリアの gnomo)と融合した。ダンジョンズ&ドラゴンズが補遺『グレイホーク』(TSR、一九七五年)で標準プレイヤー種族として採用し、ブリザードの『ワールド・オブ・ウォークラフト』(二〇〇四年)以降ノームリーガン出身の人気種族として親しまれる。

起源

現存する最古の直接記述は、スイスの医師・錬金術師テオフラストゥス・ボムバストゥス・フォン・ホーエンハイム、通称パラケルスス(一四九三-一五四一年)の没後刊行『水の精・気の精・地の精・火の精について』(Henricpetri、バーゼル、一五六六年)における四元素霊の分類である — 水のウンディーネ、気のシルフ、火のサラマンダー、そして大地のグノムス(gnomus)。語源はギリシア語 gnome(知)、もしくはラテン語の造語 genomos(地に住む者)とされ、オックスフォード英語辞典(第二版、一九八九年)『gnome』項では両説を併記する。十七世紀以降この語はヨーロッパ各地の土の精伝承 — ケルンの Heinzelmaennchen(アウグスト・コピシュ『Die Heinzelmaennchen zu Koeln』、一八三六年が初の活字化)、ポーランドの krasnoludek、コーンウォールの piskie 系の一部 — と融合した。一八四七年、サー・チャールズ・アイシャムがイングランドのノーザンプトンシャーにあるランポート・ホールに、ドイツから取り寄せた素焼きのノーム二十一体を設置したのが初のイギリス庭園ノームの記録で、現存する一体はランピ(Lampy)と呼ばれ、推定保険額一〇〇万ポンドに上る。一八四一年、ドイツ・テューリンゲン州グレーフェンローダのフィリップ・グリーベル工房が素焼きノームの工業生産を始めた。ヴィル・ハウフェンとリーン・ポールトフリート画『ノームの全生活』(『Het hele leven van de Kabouter』、De Driehoek、一九七六年)は現代大衆図像を確立したベストセラーである。ゲーリー・ガイギャックスは一九七五年の補遺『グレイホーク』(TSR)でD&Dにノームをプレイヤー種族として導入し、一九七八年の『AD&D Players Handbook』で幻影魔法系職業との親和を確立した。

特徴

  • 身長約三から三・五フィート(九〇から一一〇センチメートル)、ドワーフより小柄、大きな鼻と豊かな表情
  • 男性は長く豊かな髭、女性は精緻な髪飾り、鮮やかな赤と緑を好む衣装
  • 機械発明、錬金術、幻影魔法、宝石細工において天才的な手わざ
  • 丘や深い森の工房集落 — 第五版D&Dの『ロック・ノーム』は山岳、『フォレスト・ノーム』は深い森、ウォークラフトの『ノームリーガン』は地下都市
  • 六〇から一二〇フィートの暗視、独自のノーム語、寿命三五〇から五〇〇年

物語

ノームは奇抜な発明家、幻影術師、いたずらな賢者の典型種族である。第五版D&Dのロック・ノームは時計仕掛けやペット、義肢などを操り、発明判定に+五の修正を得る。マーガレット・ワイズとトレーシー・ヒックマンの『ドラゴンランス戦記』(TSR、一九八四-八五年)に登場する発明狂のミノイ(Minoi)族は、生涯ひとつの『人生の使命』としての発明に取り組むが百回中九十九回は爆発するという宿命を背負い、コミック悲劇の定型を作った。ブリザード『ワールド・オブ・ウォークラフト』(二〇〇四年)のノームリーガンは、自らの放射能漏れ事故で本拠を失った離散種族として描かれ、発明と悲劇の組み合わせを変奏する。窮地を奇抜な発明と幻影で打開する知略派キャラクターの定石となった。

弱点

小柄ゆえに直接戦闘に弱く、好奇心と実験への意欲が事故を呼ぶ。第五版D&Dのノームは能力値ボーナスが知力+二のみで筋力ボーナスがなく、ウォークラフトのノームは発明事故で都市ノームリーガンを放射能廃墟に変えた重荷を抱える。発明品はしばしば暴走し逆効果を起こす — マーガレット・ワイズが一九八四年のデザインノートに記したように、『ドラゴンランス』のミノイは『試作百回中九十九回は爆発する発明しか作れない』という種族的呪いを負う — コミックな定型となった。ヴィクトリア朝の庭園ノーム図像に縛られ、真面目な英雄譚で扱いにくいというメタ的弱点もある。

文化的・歴史的意義

ノームはルネサンス錬金術の四元素霊体系と、ヨーロッパ農民民俗の土の精とが、十九世紀の産業によって融合・図像化されて固定された合成種族である。一八四一年ドイツ・グレーフェンローダのグリーベル工房に始まった素焼き庭園ノームの工業生産は、二十世紀には英国・米国・日本の家庭にも広まった。英国王立園芸協会主催のチェルシー・フラワー・ショーは、一九二〇年代から二〇一三年まで庭園ノームの出品を公式に禁止しており、一〇〇周年に当たる二〇一三年に限り一度だけ解禁した。日本ではスペインとカナダの合作アニメーション『David, el Gnomo』(BRB Internacional 他、一九八五年)がフジテレビと NHK 教育テレビで放映され、子供向け環境運動の象徴となった。二〇〇四年に米国トラベロシティが採用した『Roaming Gnome』広告キャラクターは、ノームをデジタル広告時代の図像として復活させ、二〇一〇年代後半のインターネット・ミーム『this is a gnome』へとつながった。

ポップカルチャーでの登場

パラケルスス『水の精・気の精・地の精・火の精について』(Henricpetri、バーゼル、一五六六年、没後刊行) — gnomus の分類アウグスト・コピシュ『Die Heinzelmaennchen zu Koeln』(一八三六年) — ドイツ土の精伝承の活字化サー・チャールズ・アイシャム、ノーザンプトンシャーのランポート・ホール庭園ノーム二十一体設置(一八四七年) — 初の英国庭園ノーム『Lampy』フィリップ・グリーベル工房、ドイツ・テューリンゲン州グレーフェンローダ(一八四一年開設) — 工業的庭園ノーム生産の起源ヴィル・ハウフェン、リーン・ポールトフリート画『Het hele leven van de Kabouter』(De Driehoek、一九七六年) — 現代大衆図像ゲーリー・ガイギャックス『Dungeons & Dragons Supplement I: Greyhawk』(TSR、一九七五年) — D&Dプレイヤー種族導入ゲーリー・ガイギャックス『AD&D Players Handbook』(TSR、一九七八年) — 幻影魔法系種族の定着マーガレット・ワイズとトレーシー・ヒックマン『ドラゴンランス戦記』(TSR、一九八四-八五年) — 発明狂ミノイBRB Internacional『David, el Gnomo』(スペイン-カナダ、一九八五年) — 国際的環境マスコットブリザード『ワールド・オブ・ウォークラフト』(二〇〇四年)・『カタクリズム』(二〇一〇年) — ノームリーガンの離散

豆知識

  • パラケルススが gnomus の語をギリシア語 gnome(知)から作ったのか、新ラテン造語 genomos(地に住む者)から作ったのかは、オックスフォード英語辞典(第二版、一九八九年)の『gnome』項でも結論を保留し、両説を併記している。
  • ランポート・ホールの『Lampy』は一八四七年の二十一体のうち唯一現存する個体で、一九九七年に英国の保険会社 NFU Mutual がこれ単独に一〇〇万ポンドの保険を設定し、英国で最も高価な庭園装飾品として話題となった。
  • 英国王立園芸協会主催チェルシー・フラワー・ショーは一九二〇年代から二〇一三年まで庭園ノームの出品を公式禁止としており、創設一〇〇周年の二〇一三年に限り一回だけ解禁した。
  • ゲーリー・ガイギャックスは一九九〇年代後半の ENWorld インタビューで、一九七八年版 AD&D Players Handbook の『幻影術師ノーム』の典型は、自分の少年時代の近所の雑貨店主の手わざと冗談の感覚をモデルにしたと回想した。

関連項目