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ダークエルフ

Dark Elf · 闇のエルフ — 地下世界の陰謀と黒魔術

地下深くに住む闇のエルフの一派。黒や灰色の肌、白や銀の髪を持ち、蜘蛛や闇の神を崇拝する苛烈な母系社会を築く。陰謀、暗殺、黒魔法に通じ、地底の石造都市で生きる。北欧神話の svartálfar(黒のアルファル)と dökkálfar(闇のアルファル)を源流とし、スノッリ・ストゥルルソン『散文エッダ』(約一二二〇年)にその最古の記録が残る。現代の定型はゲーリー・ガイギャックスが一九七七年の『AD&D モンスター・マニュアル』で導入したドロウ(Drow)が築き、R. A. サルヴァトーレのドリッツト・ドゥアーデン連作(TSR、一九八八年から)が同族を裏切り地上へ亡命する『善きダーク・エルフ』という人気アーキタイプを定着させた。

起源

最古の直接的記述はスノッリ・ストゥルルソン『散文エッダ』「ギュルヴィたぶらかし」第十七章(約一二二〇年)で、リョースアルファルは太陽より明るく、デックアルファルは瀝青より黒く、地の下に住むと記す。「詩語法」は svartálfar の住む svartálfaheimr を別に語り、トールの槌を鍛えた名匠ブロックとエイトリもこの地に住むとされる。両者が同一の存在なのか、また両者ないしいずれかが小人(dvergr)と同じ存在なのかは、ヤーコブ・グリム『ドイツ神話学』(一八三五年)以来の論争であり、ルードルフ・シーメク『北欧神話事典』(Brewer、一九九三年)が現存資料を整理している。決定的な定型化は、ゲーリー・ガイギャックスが一九七七年の『Advanced Dungeons & Dragons Monster Manual』(TSR)で導入したドロウ、続く一九七八年のモジュール D3『Vault of the Drow』(TSR)である。後者は地下都市メンゾベランザン、蜘蛛女神ロルス(原綴 Lloth)、母系の家門社会を確立した。R. A. サルヴァトーレ『故郷』(TSR フォーゴトン・レルム、一九九〇年)はドリッツト・ドゥアーデンという亡命の英雄像を世に出した。ウォーハンマー・ファンタジーのダーク・エルフ Druchii は一九八五年の『Warhammer Armies』(Games Workshop)に登場し、エルダー・スクロールズの Dunmer は『モロウィンド』(Bethesda、二〇〇二年)で文化として精緻化された。

特徴

  • 黒や灰色、紫がかった肌、白や銀、淡紫の髪、赤や紫の瞳
  • 地下の石造都市にもとづく苛烈な母系社会 — メンゾベランザン、ナガロス、バルモラ
  • 暗殺、陰謀、奴隷制、黒魔法に長け、蜘蛛や闇神を崇拝する宗教文化
  • ロルス(D&D)、カインとシスァライ(ウォーハンマー)、ボエシア、アズラ、メファラ(エルダー・スクロールズ)など闇の神々
  • 陽光に弱い反面、暗視能力に優れ、Drow Sign Language や Undercommon、Dunmeris など固有言語を持つ

物語

一九七七年のD&D導入以後、ダーク・エルフは地下都市の陰謀と暗殺を担う標準的な敵対種族となった。同族を裏切って地上に亡命した『善きダーク・エルフ』 — ドリッツト・ドゥアーデン、『バルダーズ・ゲート3』のミンサラ、エルダー・スクロールズのダンマー難民 — は人気のあるキャラクター類型である。ウォーハンマーでは黒方舟で奴隷を略取する海賊種族として、マジック・ザ・ギャザリングの『ラヴニカ』ではディミーア組合の情報屋として展開される。エルダー・スクロールズの Dunmer は火山島ヴァーデンフェルの土着民族で、トリビューナル神学と奴隷制廃止をめぐる内戦を抱える一つの文明として描かれ、ダーク・エルフを単純な悪役を越えて立体化した代表例である。

弱点

陽光下では視力と魔法がともに鈍る(D&D第五版ドロウの『Sunlight Sensitivity』として明文化)。苛烈な階層と絶えざる家門間の陰謀により社会は内部から分裂し、ライバル家門の壊滅は宗教的儀礼にまで高められている。蜘蛛女神ロルスは試練として故意に弱点を与えることがあり(サルヴァトーレ『The Crystal Shard』一九八八年)、その上から下への虐待構造が亡命者を絶えず生み続ける。外部協力者との信頼形成は構造的に困難である。

文化的・歴史的意義

現代のダーク・エルフは一九七七年から一九九〇年にかけてアメリカのテーブルトークRPGが生み出した比較的若い種族だが、その根は十三世紀アイスランドの散文エッダにおける svartálfar に明確に通じる。二〇一〇年代以降、暗い肌色と先天的悪を結ぶ視覚的連関に人種的含意があるとの批判が広まり、ウィザーズ・オブ・ザ・コーストは『Mordenkainen Presents: Monsters of the Multiverse』(二〇二二年)でドロウの先天的悪属性を撤廃した。エルダー・スクロールズの Dunmer は、火山と灰嵐の風土、トリビューナル宗教、奴隷制廃止をめぐる政治劇を備え、ダーク・エルフを敵役でなく一つの文化として描く範例となっている。

ポップカルチャーでの登場

スノッリ・ストゥルルソン『散文エッダ』(約一二二〇年) — ギュルヴィたぶらかし第十七章のデックアルファル、詩語法の svartálfarヤーコブ・グリム『ドイツ神話学』(一八三五年) — dökkálfar と小人の関係に関する初期研究ゲーリー・ガイギャックス『Advanced Dungeons & Dragons Monster Manual』(TSR、一九七七年) — ドロウ導入ゲーリー・ガイギャックス モジュール D3『Vault of the Drow』(TSR、一九七八年) — ロルス、メンゾベランザンR. A. サルヴァトーレ『The Crystal Shard』(TSR、一九八八年)、『故郷』(一九九〇年) — ドリッツト・ドゥアーデンゲームズ・ワークショップ『Warhammer Armies』(一九八五年)、『Warhammer Armies: Dark Elves』(一九九五年) — Druchii、マルス・ダークブレイドベセスダ『エルダー・スクロールズ III: モロウィンド』(二〇〇二年)、『V: スカイリム』(二〇一一年) — Dunmer、トリビューナルウィザーズ・オブ・ザ・コースト『Mordenkainen Presents: Monsters of the Multiverse』(二〇二二年) — ドロウ属性再設定ラリアン・スタジオ『バルダーズ・ゲート3』(二〇二三年) — ミンサラ、ドリッツト登場

豆知識

  • ロルス(Lolth)の旧綴 'Lloth' は一九七八年モジュール D3 で正式登場し、一九八〇年の神格補遺『Deities & Demigods』で 'Lolth' に統一された。
  • サルヴァトーレは一九九五年のインタビューで、ドリッツトの双剣『トゥインクル』と『アイシングデス』の名はミネソタ出身の父から受けた家族内のジョークに由来すると述べた。
  • エルダー・スクロールズの Dunmer はもとカイミア(Chimer)で、女神アズラの呪いにより肌が灰色に、瞳が赤くなったとゲーム内文献『Nerevar Moon and Star』が伝える。
  • スノッリは『ギュルヴィたぶらかし』第十七章でデックアルファルが『地の下に住む』と記したのみで、その住処を svartálfaheimr と明示的に同定してはおらず、両者の関係は今なお学術論争の対象である。

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