LoreArc
medusa
1 / 1
メドゥーサ すべて見る

メドゥーサ

メドゥーサ · モンスター — 蛇の髪を持つギリシャ神話の怪物

メドゥーサ(希語 Medousa)は希臘神話のゴルゴーン三姉妹ステノ エウリュアレ メドゥーサのうち末妹であり、唯一の死すべき者である。ヘシオドス神統記によれば海神ポルキュスとケトの娘で、髪は生ける蛇 直接に視た者は皆石と化す呪詛を有する。紀元一世紀の羅馬詩人オウィディウス変身物語第四巻が、メドゥーサが本来アテナー女神神殿の麗しき女祭司であり、神殿内でポセイドンに凌辱されたところアテナーが神殿への冒涜の責を問うてメドゥーサを怪物に変えたとの悲劇的変奏を定着させた。希臘神話の英雄ペルセウスがヘルメスの翼の靴 ハデスの隠れ兜 アテナーの磨かれし青銅の盾の助けにより、彼女を直接見ることなく鏡像のみを見て首を斬り落とした。切断された頭はゴルゴネイオン(Gorgoneion)として強力なる護符・武器となりアテナーのアイギスの中央に嵌め込まれた。切断された頸より天馬ペガサスと巨人クリュサオールが生まれた。

起源

メドゥーサ最古の文献記録は紀元前八世紀ヘシオドス神統記二七〇行から二八三行であり、ゴルゴーン三姉妹は海神ポルキュスとケトの娘として描かれる。ステノとエウリュアレは不死、メドゥーサのみ死すべき者という核心設定が既にヘシオドスにおいて確立されている。ホメロス イリアス第五巻七四一行と第十一巻三十六行はゴルゴーンの頭ゴルゴネイオンがアテナーのアイギスの中央に嵌められて敵を威嚇する護符として描き、オデュッセイア第十一巻六三四行ではハデスの領域にゴルゴーンが住むと記される。ペルセウス英雄譚の正典叙述は紀元一から二世紀の偽アポロドロス図書館第二巻四章二節にあり、ピンダロス ピューティア頌歌第十二歌 オウィディウス変身物語第四巻七六九行から八〇三行が補強する。特にオウィディウスが導入した アテナーによる処罰 主題 即ち本来美しき女祭司であったメドゥーサがポセイドンに凌辱されアテナーに処罰されるという展開は羅典詩人の変形であり、希臘原典ヘシオドスではメドゥーサは初めから怪物姉妹として生まれた。

特徴

  • 髪が生ける蛇からなる
  • 直接に視た者は皆石と化す呪詛の視線
  • ゴルゴーン三姉妹の末妹かつ唯一の死すべき者
  • アポロドロスの変奏では黄金の翼と青銅の爪を有する
  • 切断された頸よりペガサスとクリュサオールが生まれる
  • 切断された頭は護符・武器ゴルゴネイオンに転化

物語

メドゥーサの切断された頭はそれ自体が希臘・羅馬美術における最強の護符図像ゴルゴネイオン(Gorgoneion)である。紀元前六世紀以後の希臘黒絵式陶器 コリントス モザイク シケリアの貨幣に定式化され、アテナーのアイギスの中央に嵌められて神聖なる威嚇の標として機能した。ルネサンス以後 ベンヴェヌート・チェッリーニのペルセウスとメドゥーサの首青銅像 一五五四年 フィレンツェのロッジア・デイ・ランツィ カラヴァッジオのメドゥーサの首 一五九七年から一五九八年 ウフィツィ美術館蔵 ペーテル・パウル・ルーベンスのメドゥーサの首 一六一七年から一六一八年 ウィーン美術史美術館蔵などが美術史の代表図像となった。ダンテは神曲地獄篇第九歌五十二行から六十三行にてディス城の威嚇としてメドゥーサを引いた。現代ではヴェルサーチェ ファッションハウスのロゴ 一九七八年採用 映画 タイタンの戦い 一九八一年・二〇一〇年 ダンジョンズ・アンド・ドラゴンズ正典怪物などに継承される。

弱点

メドゥーサの決定的弱点は自身の視線が自分自身にも有効である点である。偽アポロドロス図書館によればペルセウスはアテナーが与えた良く磨かれた青銅の盾の鏡像を用いて、メドゥーサを直接見ることなく彼女を斬った。鏡の盾という装置は希臘神話における 視線の危険を反射により回避する 最も洗練された英雄試煉の構造である。メドゥーサが眠っている時に最も脆弱であるとの変奏もあり、ピンダロス ピューティア頌歌第十二歌および偽アポロドロスでは、ペルセウスがグライアイ三姉妹より情報を得てヘルメスの翼の靴とハデスの隠れ兜を借り、眠るメドゥーサを斬る版が正典である。死そのものが当初からメドゥーサに定義されている点 即ち姉妹のうち彼女のみが死すべき者であるという神話構造そのものが、もう一つの決定的限界である。

文化的・歴史的意義

メドゥーサは単なる怪物ではなく希臘神話における最も複雑な図像である。切断された頭ゴルゴネイオンは紀元前六世紀以後の希臘護符図像学の頂点に立ち、磨かれた青銅の盾の反射により視線を迂回するペルセウス神話の構造は、視線・反射・認識の哲学的考察の神話的原型として扱われる。カラヴァッジオの一五九七年から一五九八年メドゥーサの首 チェッリーニの一五五四年ペルセウス青銅像 ルーベンスの一六一七年から一六一八年メドゥーサの首はルネサンス・バロック美術の正典図像となった。二十世紀においてフランスのフェミニスト批評家エレーヌ・シクスーの一九七五年論文メドゥーサの笑い(Le Rire de la Meduse)がメドゥーサを家父長制神話の犠牲者から女性的力の象徴へと再解釈し、フェミニスト批評の核心図像として確立した。ヴェルサーチェの一九七八年ロゴ採用 ダンジョンズ・アンド・ドラゴンズ正典怪物への継承に至るまで メドゥーサは古代から現代まで最も頻繁に再解釈される神話人物である。

ポップカルチャーでの登場

ヘシオドス 神統記 二七〇行から二八三行 紀元前八世紀 ゴルゴーン三姉妹の最古文献ホメロス イリアス 第五巻七四一行と第十一巻三十六行 アテナーのアイギスに嵌められたゴルゴネイオンピンダロス ピューティア頌歌 第十二歌 ペルセウスのメドゥーサ討伐譚偽アポロドロス 図書館 第二巻四章二節 紀元一から二世紀 ペルセウス英雄譚の正典オウィディウス 変身物語 第四巻七六九行から八〇三行 アテナーによる処罰主題の導入ダンテ 神曲 地獄篇 第九歌五十二行から六十三行 ディス城の威嚇としてのメドゥーサエレーヌ・シクスー メドゥーサの笑い Le Rire de la Meduse 一九七五年 フェミニズム的再解釈