「近世」タグが付いたアイテム 12件
鳥のくちばしマスクを持つ疫病医の保護服
ペスト医師の装束は17世紀ヨーロッパの黒死病流行期にペスト患者を治療した医師が着用した保護服で、長い鳥のくちばし形マスク、足首まで降りるワックスを塗った長い革コート、つば広帽子、長手袋、ブーツ、手に持つ長い杖で構成された世界史上最も奇異な医学服。1619年フランス医師シャルル・ド・ロルムが考案し、当時医学界は「悪い空気(ミアスマ)」が病を伝播すると信じたため、くちばしの中に乾燥ハーブ・香料・酢に浸した布を入れ空気を「浄化」しながら呼吸するよう設計した。
女性の上半身を包む密着上衣
ボディスは16世紀から18世紀にかけてヨーロッパ女性が着用した、上半身に密着する上衣である。コルセットの上に着用し、背面や前面のレーシングで体に密着させ、ウエストとバストのシルエットを極端に強調した。鯨骨や金属の芯で形を保つボーニング技法が用いられ、貴族女性のボディスには刺繍や宝石が施された。
膝丈の貴族男性用ズボン
ブリーチズは16世紀から19世紀にかけてヨーロッパ男性が着用した膝丈のズボンである。中世のホーズから発展し、膝下でボタンやバックルで留める構造を持つ。シルクストッキングと合わせるのが貴族ファッションの定番で、フランス革命時には階級の象徴となった。
舞踏会のための正装ドレス
舞踏会用ドレスは18〜19世紀のヨーロッパ上流社会の舞踏会で着用された正装ドレスである。コルセットで極端に締めた腰、オフショルダーのネックライン、クリノリンやバッスルで形成した豪華なスカートが三大特徴である。ヴィクトリア時代に全盛期を迎え、家族の富と地位の象徴であった。
大学学位者の黒い正装
学士ガウンは12世紀ヨーロッパ大学設立以来学者と学位者が着用した黒い長い正装で、中世修道士服に由来し学問と宗教が密接だった初期大学の伝統が残る服装である。ボローニャ・パリ・オックスフォードの教授と学生が修道士の長ローブを世俗化して採用したのが始まりで、学位別に色・形・フード装飾が厳格に区分される。医学は緑、法学は紫、神学は赤、哲学は青など分野別のフード色が伝統。
貴族邸宅男性執事の正装
執事の燕尾服は19~20世紀初イギリス貴族邸宅の男性執事が着用した黒い燕尾服正装で、主人家族と客接待の最前線に立つ邸宅男性使用人最高位の制服。前襟が腰までで後襟が膝下に長く二股に分かれる「燕尾」形態が特徴で、この燕尾服自体は元は貴族男性の夜会服だったが19世紀後半主人との服装格差のため執事制服に変形した。
ヴィクトリア邸宅の女性使用人制服
メイド服は19世紀ヴィクトリア時代イギリスを中心に上流邸宅で働く女性使用人が着用した制服で、黒や濃紺の長いワンピースに白いエプロンを付け頭に白い帽子をかぶる独特な白黒対比が特徴。19世紀中葉イギリス中産層が急激に豊かになり使用人雇用が階級の象徴となり「うちの使用人はこんな制服を着る」と誇示するために制服が標準化された。
騎兵の曲線形斬撃剣
サーベルは17〜19世紀ヨーロッパ騎兵の標準刀で、約80〜90cmの緩やかに湾曲した片刃の刃と、手全体を覆うD字形の手甲(ガード)を特徴とする。刃の湾曲は馬を駆りながらすれ違いざまに斬る斬撃(引き斬り)に最適化され、突撃の一瞬に深い切創を残す。17世紀の東欧・ハンガリー騎兵の曲刀から生まれ、西欧全域へ広まり、ナポレオン戦争期にはフランス・イギリス・プロイセンなど全主要国の騎兵の主武器となった。全重約900g〜1.1kgで片手で扱い、華やかな軽騎兵の軍服とともに「騎兵の時代」を象徴する。今日のフェンシングのサーブル種目はこれに由来する。
近代歩兵の火縄銃
マスケットは15〜19世紀に用いられた前装式(銃口装填)の滑腔長銃で、甲冑の時代を終わらせた革命的な火器である。ハンドカノンから発展し、点火方式によって火縄銃(マッチロック)→燧石銃(フリントロック)→雷管銃(パーカッションキャップ)へと次第に改良された。有効射程は約100m、毎分2〜3発で、個々の命中率は低いが、数百人が横隊に並んで一斉に撃つ線形戦術(ラインインファントリー)では絶大な威力を発揮した。いかなる板金鎧もマスケットの弾を防げず、鎧に守られた中世騎士階級の軍事的優位はついに消滅した。16世紀からナポレオン戦争まで歩兵の標準火器であり、銃剣を付ければ槍として近接戦も兼ねた。
火打石式単発拳銃
フリントロック式拳銃は、火打石(フリント)が鋼鉄(フリッツェン)を打って散らした火花で点火薬を点火し、その火が火室の装薬に移って発射される単発拳銃である。17世紀初頭のフランスで完成したフリントロック(燧石式)点火機構を拳銃に応用したもので、先行する火縄銃やホイールロックの拳銃に取って代わり、17〜19世紀の軍用・民間用として広く普及した。有効射程は約15mと短く命中率も低く、一発撃つと再装填に時間がかかった。そのため撃ち終えると銃を逆さに握り、銃床で殴る棍棒として使うこともあった。海賊と騎兵の象徴であり、名誉を懸けた決闘(デュエル)の標準武器でもあった。
刺突特化のルネサンス細剣
レイピアはルネサンス期のヨーロッパに生まれた突き特化の剣で、約100~130cmの長く細い両刃の刀身が特徴である。刀身は細く硬く、先が鋭くて突きに最適化されている。最も目を引く特徴は手を包む複雑な『スウェプトヒルト』のガードで、複数の輪とナックルボウ、クィヨンが手全体を鳥籠のように守る。十六~十八世紀ヨーロッパの貴族と民間人の護身用武器であり、名誉を賭けた決闘の標準武器だった。細く見えるが、長い刀身と大きなガードのため総重量は約1~1.4kgに及ぶ。現代フェンシングのエペ・フルーレがこの武器から発達し、体系的な剣術の流派の誕生を導いた武器でもある。
16世紀スペイン発祥の鶏冠型兜
モリオン(Morion、スペイン語morrion)は十六から十七世紀の欧州に育った開放式の戦の兜で、頭の真ん中を貫いて高く立ち上がる稜(コム、comb)と、前後に尖って張り出す広い庇(つば、brim)が作る独特の姿が最大の特徴である。顔の前が全く開いており、視界と呼吸、聴覚が閉じた兜よりはるかに良く、十六世紀の長い行軍と野戦に適していた。高い真ん中の稜は単なる飾りではなく、上から振り下ろされる剣や戦戦の連枷の一撃を脇に流す構造の補強であり、広い庇は上から落ちる矢や石を防いで肩と首を覆った。比較的簡素な形ゆえ大量に打ち出すことができ、スペインのテルシオ歩兵の標準の頭の装いとなり、新大陸の植民地守備隊と欧州諸宮廷の儀仗を経て、今日でもバチカンの教皇庁スイス衛兵が磨かれたモリオンを儀礼の一部として用いている。