雪女
Yuki-onna · 雪女 — 吹雪の中に現れる冷たく悲しい美女
雪女(ゆきおんな Yuki-onna)は雪降る夜に吹雪の中より忽然と現れる蒼白なる美女妖怪にて 白き着物に漆黒なる髪 血の気なき顔にて道に迷へる旅人に近寄りて冷たき息にて凍らせて殺す日本冬の雪山妖怪の決定的正典図像である。図像学的起源は日本東北・中部・北海道等豪雪地帯の凍死(とうし)伝承と山の神信仰が結合せし結果である。最も早き文献記録は室町時代(千三百三十六年から千五百七十三年)連歌作者宗祇(そうぎ 千四百二十一年から千五百二年)の紀行文宗祇諸国物語(十五世紀末推定)にて越後國(現新潟県)の雪山にて遭ひたる白き衣の女に関する記録にて 江戸時代千七百七十六年鳥山石燕(とりやま せきえん 千七百十二年から千七百八十八年)の妖怪図鑑画図百鬼夜行に雪女が正典的妖怪として体系化された。最も決定的なる正典は千九百四年四月ラフカディオ・ハーン(Lafcadio Hearn 千八百五十年から千九百四年 日本名小泉八雲)の英文短編集怪談(Kwaidan: Stories and Studies of Strange Things)の雪女(Yuki-Onna)短編 — 武蔵國の老若樵夫の茂作(もさく)と巳之吉(みのきち)が吹雪に閉じ込められて休息したる中 雪女が茂作を殺して巳之吉は秘密を漏らさざるとの約束にて生かされたる後 巳之吉が結婚せし妻お雪(おゆき)が実は雪女なりしを秘密漏らせし後に悟りて彼女が消えたる悲劇 — が現代雪女図像の決定的正典を確立した。千九百六十五年小林正樹(こばやし まさき 千九百十六年から千九百九十六年)監督の映画怪談中の雪女エピソードがカンヌ映画祭審査員特別賞を受賞してグローバル正典を完成させた。